2015年02月18日

談春 古住今来(2015年2月18日)

最近読んだ本の中では、立川談春さんの著書「談春 古住今来」が印象に残る。談春さんがこれまで書いたエッセイ、受けたインタビューをまとめたもの。エッセイスト談春はいい人、白談春。インタビュイー談春は黒談春。インタビュアーの立ち振る舞いや言動にへそを曲げ「おれは帰る」。「じゃあ、逆にあんたに聞くけど」とインタビュアーの人間性を確かめる逆質問。これは本来の性格ではなく、談志さんに弟子入りしてからだそうだ。

「まあ、ひねくれているよね、オレは。まずどんなことでも否定から入るし、すぐに了見を試すような事をする。簡単なことが、すぐややこしくなっちゃうんだよ」

「談志に憧れて、いつの間にか、素の自分と演じている自分が同化してきたんだろうね」

談春さんのエッセイには、二葉亭四迷のエピソードがたびたび出てくる。

アイラブユーという言葉がはじめて日本に入ってきた時に、「あなたとならば死んでもいい」と訳した。

談春さんは、情愛が深くこれと見込んだ人間を徹底して愛する。その分、相手にもそれを求める。

だからこそ物騒な物言いをし、人間関係が複雑怪奇になっていく。そこがファンを魅了するのだろう。

基本的には談春ファンや談春さんに興味のある人以外には、あまりオススメできない。ただ、日常生活のヒントになるような話や、「さすが談春!」とうなりたくなるようなフレーズの数々がある。


個人的に気に入っているのは、さだまさしさんと談春さんの対談。談春さんは素人の頃からのさだファン。さださんは高校時代、落語研究会に所属していたほどの落語ファン。意気投合するのに時間はかからなかった。中でもいいのは、談春さんが後輩の志らくさんに抜かれた(先に真打に昇進された)時の話。談春さんは「趣味はマイナス思考」と仰る御仁で、当然自分の落語もマイナス評価から入る。「あれができない、ここにミスがある」。そんな談春さんにさださんはこう言ったそうだ。「お前、何様のつもりだ。お前の考えるようなオールマイティーになれないぞ」。それで談春さんは長所を伸ばすようになった。

さだ「それは絶対そう。短所は消えない。消えないから、長所だけで勝負すればいいじゃないか」「お前ね、歯をくいしばってな、長所だけを五年やってみろ。お前の長所は人情噺だってみんな言っているんだから人情噺だけやっていろ。五年たったらな、お前が苦手だと思っていた噺もな、うまくなっているよ。長所が上がれば短所も上がるんだ。同じようにな、短所を上げても、長所が下がるぞ」

このさださんの言葉はスポーツ選手や、学校の勉強、ひいては日々の仕事にも役に立つ言葉ですよね。

あと印象に残っているのは、中村勘三郎さんとのエピソードが面白かった。初めて勘三郎さんと談春さんがサシで飲みに行く時、なぜか劇場に談志さんが現れた。

勘三郎「我が儘なのは分かっていたけどさ改めて怖い人だと思ったのよ。絶対今晩僕と君が会うことをアンテナが察知したんだよ。偵察に来たんだ。驚いたね」

談志さんはすごく敏感な方でしたからね。しかし、すごいよな。

あとエッセイの中で「カシスウーロン?なんだそりゃ、大井競馬の馬の名前か」というフレーズがあり、これはぜひ使わせていただこうと思った次第。





posted by 雷庵博人 at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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