2013年09月27日

田中将大の目に不動明王を見た

最後、田中将大は浅村からストレートで空振り三振を奪う。試合終了。歓喜の輪、そして胴上げ始まる。今シーズンの田中将大投手を象徴するかのような、素晴らしいピッチングだった。それにしても、人間がここまでの境地に、達することができるのか。改めて感服した。

西武対楽天・日刊スポーツのボックススコア(2013年9月26日)

9回裏、楽天が1点リードの場面。星野監督は田中将大を登板させる。「田中将大こそが胴上げ投手にふさわしい」確固たる起用だ。

熾烈なAクラス争いを続けるライオンズ。ヒットとフォアボールで一死2・3塁と一打逆転の所まで田中を追い詰めた。3番栗山、4番浅村とライオンズは最高の形を作る。

しかし、今シーズンの田中は形は作らせても、点数を許さない。栗山をストレートで見逃しの三振。

続く浅村との勝負。テレビカメラは田中をアップで移す。その時、私は思った。

「すごい目をしている。これはもう、すべてのイーグルスファンの期待を背負っている目だ。不動明王の境地か」

不動明王とは・・・
不動明王は悪魔を降伏するために恐ろしい姿をされ、すべての障害を打ち砕き、おとなしく仏道に従わないものを、無理矢理にでも導き救済するという役目を持っておられ、真言宗の教主「大日如来」の使者です。お姿は、目を怒らせ、右手に宝剣を持ち左手に縄を持つ大変恐ろしい姿をしておられますが、そのお心は人々を救済しようとする、厳しくもやさしい慈悲に満ちております。
昨日の田中は、ストレートでライオンズをねじ伏せ、チームを優勝に導き、ファンや東北の人々を優勝の喜びに導いた。

「マー君、神の子、不思議の子」

野村克也さんの言葉はこの日を予言していた。とは流石に言いすぎだろうか。

そして私は、ある本のエピソードを思い出す。


千葉ロッテマリーンズの伊東勤監督の著書「勝負師」にこんな一節がある。「ブライアント選手のオーラ」とのタイトル。一部を引用したい。
(1989年)10月12日、バファローズとのダブルヘッターを迎えました。第一試合、私は後にも先にもない経験をしました。
 ブライアント選手が1打席目に入る前のことでした。ネクスト・バッターズ・サークルにいたブライアント選手から異様な雰囲気を感じたのです。マスクを構えてその前のバッターと対戦していても、熱いオーラと表現するのが適切でしょうか、そこにブライアント選手がいるという存在感が伝わってきたのです。これは勝負の世界に棲んでいる人間だけが感じることができるものだったと思います。それまでの選手生活で、バッターのこれほどのオーラを感じたことはありませんでした。
「今日は打たれるかもしれないな」
そう思ったほどでした。
(中略)
 ブライアント選手に感じたオーラの正体はなんだったのでしょうか。私は多くの人たちの「思い」の集合だったと思います。
 ライオンズの黄金時代のまっただ中、バファローズは前年の「10.19」で悲劇的な形優勝を逃しました。選手はもちろん、ファン、さらに球場に来られなかったファンには今年こそという思いがあったことでしょう。さらに世間にはバファローズに勝たせたいという思いがあふれていたと思います。あらゆる人の思いをブライアント選手は打席で一身に背負っていたのではないでしょうか。
「ホームベースは男の砦」。伊東勤が言うのなら間違いがない。野球選手には「多くの人たちの思い」を背負ってプレーする瞬間があるのだと。その思いが多ければ多いほど、その選手は活躍する。

ブライアントはダブルヘッダー2試合で、4打席連続ホームランをかっ飛ばした。
田中将大は開幕22連勝、無敗。そして昨日の試合。 

神がかりとしか表現できないプレー。本人の研鑽ももちろんだが、「多くの人たちの思い」が後押しをしたのは間違いが無いだろう。

1989年10月12日。伊東勤捕手がブライアント選手から感じた「多くの人たちの思い」を、2013年9月26日に私はテレビの画面越しだったが、確かに感じた。「多くの人たちの思い」が後押ししたからこそ、あのストレートの前に栗山も浅村も手が出なかったのだ。

マウンドでの田中将大。その目は「不動明王」のようだった。
posted by 雷庵博人 at 14:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 我等のパシフィックリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
普段はももクロ話に笑顔のマー君だが、マウンドでは厳しい目付きですよね。
今シーズンはまさに神の子ですよ。素晴らしい。
Posted by ぷう at 2013年09月28日 11:28
>>ぷうさん
>>普段はももクロ話に笑顔のマー君だが、マウンドでは厳しい目付きですよね。
ツイッターで「世界一野球の上手なアイドルオタク」と評した方がいらっしゃいました。世の中には、うまいことを言う人がいるものです。

22勝無敗ですからね。神ですよ。
Posted by 雷庵博人 at 2013年09月28日 20:40
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